後遺障害の被害者請求|申請・認定の流れ・期間・必要書類を解説
交通事故の後遺障害等級認定は、事前認定より被害者請求がなぜよいのかご存知ですか? 今回は後遺障害等級認定申請の「被害…[続きを読む]
後遺障害5級1号~8号の認定では、労働能力喪失率が79%に達し、弁護士や裁判の相場基準では1400万円となります。このような後遺障害は、社会生活に大きな影響を与えます。
また、後遺障害5級2号は高次脳機能障害、後遺障害5級5号は下肢欠損などで認定されるケースがあります。
適切な後遺障害等級を取得し、適正な示談金を受け取ることは、生活を補償するためにも必要です。希望していた等級の認定を受けられず、当然受けられるべき補償を得られない状況に陥ることは避けるべきです。
そこで今回は、後遺障害5級1号~8号の適正な認定方法や、慰謝料や示談金の一般的な金額相場、増額の方法、実際の事例などについて詳しくご説明いたします。
目次
後遺障害5級1号~8号の主な症状と慰謝料相場は下表の通りです。
慰謝料の計算方法には、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準の3つの基準があり、自賠責基準から順に高額となります。
等級 | 症状 |
---|---|
5級1号 | 1眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの |
5級2号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
5級3号 | 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
5級4号 | 1上肢を手関節以上で失ったもの |
5級5号 | 1下肢を足関節以上で失ったもの |
5級6号 | 1上肢の用の全廃したもの |
5級7号 | 1下肢の用を全廃したもの |
5級8号 | 両足の足指の全部を失ったもの |
5級の後遺障害慰謝料の相場 | ||
---|---|---|
自賠責基準 | 任意保険基準(※) | 弁護士・裁判基準 |
618万円程度 | 700万円程度 | 1400万円程度 |
上記の表からわかる通り、弁護士・裁判基準と自賠責基準の後遺障害慰謝料とでは、2倍以上もの差がついています。
自賠責基準とは、人身事故での最低限の補償を定めたものであり、任意保険基準とは、任意保険会社が独自に賠償額を提示する際に用いる基準です。
弁護士・裁判基準は、過去の裁判例を基に定められた基準であり、実際に裁判で用いられる基準です。最終的な損害賠償額を決定する権限がある裁判所で使われている基準ですから、この基準が唯一正しい基準です。
慰謝料は、弁護士・裁判基準で計算しなければ、自ら受け取ることができるはずの賠償額を放棄していることになってしまいます。
※任意保険基準については、一般に公開されておりません。そのため、旧任意保険の統一支払基準を参考に記載。
それでは次に、後遺障害が残った場合に請求することができる重要な項目である逸失利益について考えてみましょう。
後遺障害逸失利益は、後遺障害がなければ得られたであろう将来の収入です。
逸失利益は、以下の計算式で求めることができます。
なお、「被害者の年齢に応じたライプニッツ係数」「労働能力喪失率」は、国土交通省の以下のサイトで調べることができます。
参考外部サイト:国土交通省「就労可能年数とライプニッツ係数表」「労働能力喪失率」
次に以下の事例で実際に逸失利益を計算してみましょう。
後遺障害5級の労働能力喪失率は、79%です。
事例
被害者の年齢・性別:60歳男性
被害者の年収:750万円
被害者の後遺障害等級:5級3号
750万円(年収)×79%(労働能力喪失率)×9.954(年齢60歳のライプニッツ係数※)=58,977,450円
※ 2020年31日以前に発生した事故の場合は、ライプニッツ係数を8.863で計算
この事例を計算式に当てはめると、逸失利益は約5900万円となることが分かります。
社会生活に支障が出る後遺障害5級認定は、適正な等級の認定が受けられるように、後遺障害の請求手続きを被害者請求で行うことをお勧めします。
被害者請求は、自賠責保険への請求を被害者が自身で行う方法です。一方、事前認定と言われるもう一つの請求方法は、相手側の保険会社に手続きを任せてしまうやり方です。被害者請求は、手続きが煩雑になるのと引きかえに、請求内容を自身で検討することができます。
また、後遺障害診断書も請求手続きで重要となります。認定のための審査は、すべて書面で行われるからです。
医師は、後遺障害診断書の作成のプロではないということです。この点は気を付けておくことです。
後遺障害認定を受けるためには、どのように書いてもらったほうがよいのか、経験豊かな交通事故に強い弁護士にチェックを依頼するのが確実です。
修正が必要な場合は、医師に書き直しをお願いするとよいでしょう。
弁護士に依頼すれば、これら2つについて効果的なアドバイスを受けることができます。
後遺障害5級の裁判例を2つご紹介します。後遺障害5級の慰謝料がどこまで認められるのか確認してみましょう。
裁判例1
大阪地裁平成23年2月21日判決
被害者はクラブ店長の男性(症状固定時38歳)。
自転車で横断歩道を走行中に、左折してきたバスと衝突し、左前輪に巻き込まれてしまいました。
自賠責保険では、右上肢機能障害、両手指の機能障害、右股関節機能障害などで併合5級に認定されました。
この事故では、加害者のバス運転手は事故に気づき、被害者が左前輪に挟まれていることを確認しながらバスを再発進させました。加害者は、バスを少し前進させれば、被害者の身体を開放できると考えての行動だったと主張しました。
裁判所は、バスを再発進させた加害者の意図はともかくとして、これにより被害者の傷害の程度が増したこと、更にひかれるのではないかという恐怖心を与えたことは容易に想定できることを指摘し、これらを慰謝料増額事由として考慮し、入通院慰謝料240万円に加えて、後遺障害慰謝料1700万円を認めました。
参考文献:自保ジャーナル1857号21頁
裁判例2
福岡地裁平成28年4月25日判決
被害者は男子大学生(症状固定時22歳)。
加害車両が右折し、被害者のバイクが直進するのを妨害して衝突した事故です。
左肩関節機能障害、左手関節用廃、左手指用廃などで、自賠責保険により併合5級に認定されました。
裁判所は、
などの諸事情を考慮して、入通院慰謝料317万円に加え、後遺障害慰謝料1600万円を認めました。
参考文献:自保ジャーナル1980号20頁
後遺障害5級の弁護士・裁判基準の後遺障害慰謝料の相場は、1400万円ですが、この2つの裁判例は、これを超えて認められています。
本来、慰謝料は、事故態様などを考慮し、個別に判断されるため、現実に支払われる金額は、事故ごとに異なります。
機械的に処理する自賠責保険とは違い、裁判所は、被害者の性別や年齢、職業や生活状況などあらゆる事情を念頭に判断するため、このように相場を超えることもあり得るのです。
同じ等級でも事情によっては、これだけ増額されることがあることを覚えておいてください。
また、交通事故に詳しい弁護士に依頼すれば、以下のようなメリットがあるのです。
示談で被害者個人が弁護士・裁判基準で慰謝料・示談金を交渉することは、残念ながらとても困難です。
しかし、交通事故に詳しい弁護士に依頼すれば、代わりに弁護士・裁判基準で保険会社と交渉してくれます。
そのためにも、後遺障害認定等級認定に強く、治療、検査の医学的知識が豊富な弁護士を選ぶことこそが大切です。
自分の事故のケースで、後遺障害5級の慰謝料相場を簡単に調べたい方もいるでしょう。
その場合は、下記の慰謝料自動計算機をご利用ください。
通院期間や後遺障害等級を入力することで、自分の後遺障害慰謝料相場を弁護士基準で計算することが可能になります。
後遺障害5級の場合、後遺障害慰謝料の相場も自賠責基準で599万円、弁護士・裁判基準で1400万円です。
後遺障害等級5級が認定されたら、「後遺症部分の損害」を相手方に請求できます。
後遺障害等級5級の自賠責基準で599万円であり、被害者請求により先取りできます。 そして、不足している損害額を相手方に請求することになります。
今回は、後遺障害5級1号~8号に認定される場合と認定をより確実にする方法、後遺障害5級に認定された場合の賠償金、示談金の金額事例などについて解説しました。
後遺障害5級1号~8号に認定されるケースは、労働能力喪失率が79%と高く、適切に等級認定を受けてなるべく多額の損害賠償金を支払ってもらうことが重要になります。
そのためには、交通事故に詳しい弁護士に依頼して、適正な等級認定の可能性を上げること、適切な金額の損害賠償金を獲得してもらうことが最も利益につながります。